日向坂46『川は流れる』の歌詞の意味を解釈 -無常観と”永遠への欲”-

日向坂46
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3rdシングル通常盤収録楽曲『川は流れる』

全員の参加楽曲となっている『川は流れる』の音源は9月25日、レコメン!にて公開となりました。
通常盤収録になっている楽曲は不遇な扱いを受けてしまうことも多いですが、隠れ名曲も多いポジションです。

『川は流れる』では、変わりゆくもののメタファーとして「川」が採用され、春夏秋冬が絡められた物語となっています。
サウンド面では伸びやかなサビとアップテンポなAメロが対照的な構成となっています。

【日向坂46】「川は流れる」音源_哔哩哔哩 (゜-゜)つロ 干杯~-bilibili
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サビ

川は流れる
空を映して…
季節の花も…
あの夕立も…
川は流れる
落ちた枯葉も…
止まない雪も…
川は流れる

日向坂46 『川は流れる』

この楽曲もサビから始まります。
「川は流れる」という情景描写の後に、添加の助詞「も」によって、他の流転していくものたちを描写しています。「季節の花」「あの夕立」「落ちた枯葉」「止まない雪」。これらはそれぞれ春夏秋冬の象徴として、流れ行く時間、変化していく季節を感じさせます。

1番 Aメロ・Bメロ

ああ 些細なことで悩まないで
地球は回ってるんだ
とてつもない速さで変わってく(この世界)
ああ 今日のしあわせもふしあわせも
どこかに消えるのか
いつの日にかそんなこともあったと(想うだけ)

森羅万象すべて一瞬だ
この身を任せ生きよう

日向坂46 『川は流れる』

Bメロの「森羅万象すべて一瞬だ」という言葉の書き下しがAメロの内容になっています。

万物は川のように流れ、今この状態はどこかへと流れていく。だから、それに一喜一憂しても意味はないから、ただ「この身を任せ生きよう」と考えるのです。

1番 サビ

川に流れる
光と影よ
頬の涙も…
誰かの声も
川に流れる
思い出し笑いも
あの独り言も…
川に流れる

日向坂46 『川は流れる』

この部分では「川流れる」という助詞に変わっています。川の流れと一緒に流れるもの。それは「光と影」。そして、「頬の涙」「誰かの声」「思い出し笑い」「あの独り言」もまた、川に流れるように、流れて行きます。
喩空間において、「川」が”流転して行く万物”を表すなら「川に流れる光と影」はそれに付き従い流れて行くものを表します。それはここに描かれたような、人の感情、人の応答と言えるでしょう。

「あの独り言」だけ、語り手との繋がりを示唆する表現となっています。内容は一意に決まりません。しかし、応答として同列に扱われていますから、「あの独り言」が語り手に何かを考えさせている、語り手を傷つけているというよりも、何らかの事象を受けて応答として発された「独り言」であると捉えられます。

2番 Aメロ・Bメロ

ああ 掌(てのひら)で堰き止めようが
時代は移り変わってく
深い底に何を残すのだろう?(その記憶)
ああ 生きるということは辛くて
苦しいものだけど
どうせいつか消えてなくなるんだ(泡のように)

どこを目指しているのか?
要らないものは沈む

日向坂46 『川は流れる』

大きな川の流れをちっぽけな掌で堰き止めても、その流れは止まりません。しかし、流れる水自体はどこかへと行ってしまいますが、運ばれたものを底に残して行くように、流れ行く時代も記憶をここに残して行きます。

そして自分自身もまた川の流れの中にあり、時代の流れとともに去って消えて行きます。

2番のBメロでは堆積したものが「要らないもの」と表現されます。Aメロでは「記憶」と表現されていたことを考えると、これは残念ながら矛盾描写と言えます。
時代、もしくはその中にいる人々にとって要らないものが記憶として残っているのでしょうか?いいえ、そうではないでしょう。そのような示唆は他の部分にありません。

Cメロ・落ちサビ

(ハーハー)
春夏秋冬って ただ ずっと繰り返しながら
(ハーハー)
決められた運命を 僕たちはただ流されて行く
(ハーハー)
自然には勝てないよ 成り行き次第ってことさ
(ハーハー)

川に流れる
光と影よ
頬の涙も…
誰かの声も
川に流れる
思い出し笑いも
あの独り言も…
川に流れる

日向坂46 『川は流れる』

ゆっくりなサビが何度も登場するのは鬱陶しいということもあり、2番はサビなしでCメロに入ります。

歌われる内容は、ただ無常の流れに身を任せ用というもので、これまでの内容と変わりません。

後奏〜ポエトリー

川は流れる
川は流れる
川は流れる
川は流れる
川は流れる
川は流れる
川は流れる
川は流れる

春の光に心を弾ませて
夏の太陽に情熱覚えて
秋の静けさに物思いに更け
冬の絶望にやがて立ち上がり
僕たちは何度 夢見れば気が済む?
仮に友の名を呼んでみたところで
辺りはとっくに 人影も消えて
いつしか人生を終えているんだ

「それでも」と
僕は思う
生きていきたい
死にたくない
命は確かに
叫んでいるんだ
川は流れる

日向坂46 『川は流れる』

構想は「川は流れる」のサビをバックコーラスに、Aメロのような小気味いいメロディーになっています。
私たちが春夏秋冬にいたずらに心を動かしている間に、”川は流れ”て行きます。気付いた時には”川の流れ”とともに自分も人生を終えているのでしょう。「辺りはとっくに人影も消えて」は「友」をはじめとする親しい人が皆死んだのではなく、自分が死ぬことを表しています。

最後のパート。効果的にポエトリーリーディングが用いられ、これまでの内容をどんでん返して終わります。時代の流れの中にある人は時代の流れとともに現在いまを去り、その流れを止めることは適いません。そして、語り手もそれを知っているから、「この身を任せ生きよう」「決められた運命」「成り行き次第」という言葉が使われています。

しかしながら、「『それでも』と僕は思う」のです。無常の流れの中にあり、無常の流れに弄ばれるのが生命であるならば、その中で変化を恐れ変化に抗い、永遠・停留を求めてしまうのもまた生命。本来は拡散していくはずの物質たちを溜め込み、動的平衡を保ち、流れに抗う宿命にあります。語り手はその野生的な生命の叫びを自分の中に感じているのです。

最後にメンバー全員の声で「川は流れる」と決然と言い切られるとき、語り手の変化への恐れ・迷い・抵抗、これらが巨きな流れと対比され、その後味は聴き手に託されます。
無常。こうした語り手の気持ちもまた、川に流れているのかもしれません。


191007 公開

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