乃木坂46 23rdシングル表題曲「Sing Out!」はどんな応援歌なのか?

乃木坂46
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「Sing Out!」はどんな曲?

2019年5月29日に乃木坂46がリリースした「Sing Out!」は同シングルの表題曲で齋藤飛鳥さんがセンターを務めています。
ハンドクラップが取り入れられることで親しみやすい曲となっており、MVではグループのイメージカラーである紫を基調とした衣装を纏ったメンバーが美しいダンスを披露しています。撮影には「君の名は希望」のMVのセットがまた使われているそうです。

乃木坂46 『Sing Out!』

ぱっと聞いた感じは聞き手に対する応援歌になっているのですが、どのような歌詞の構造になっているのでしょうか?

英語によるIntro〜Bメロ -“自分から見えない人たち”に思いを馳せる-

LA LA LA LA LA LA…
Happy!Happy!If you wanna bring big smiles,sing out!

世界は広すぎて 見渡せない
青空はどこまで続くのか?
水平線のその向こうは 晴れてるのか?
それとも土砂降りの雨か?

ここにいない誰かのために
今 何ができるのだろう
みんなが思えたらいい
自分のしあわせを 少しずつ分け合えば
笑顔は広がる

乃木坂46 『Sing Out!』

1番のAメロでは、自分がいる場所は見渡す限り「青空」が広がっているけれど、水平線の向こうの天気はわからないということが歌われています。登場する「青空」・「土砂降りの雨」などの天気の表現は、心情や置かれている状況のことのメタファーとしてはたらいています。
つまり、自分は晴れやかな気分の中にいるけれども、自分が見えない場所の人たちはいま笑っているのか泣いているのかわからないと、思いを馳せているのです。

続くBメロではそのような”自分から見えない人たち”に対してみんなが思いやる世界になればいいという希望が歌われます。

1番のサビ〜ブリッジ -“自分から見えない人たち”へ歌を歌おう-

この想い届け Clap your hands
風に乗って飛んで行け 愛の歌
一人ぼっちじゃないんだよ
Say hello! Say hello! Say hello!

LA LA LA LA LA LA…
Happy!Happy!Everybody be happy!
LA LA LA LA LA LA…
Happy!Happy!If you wanna bring big smiles,sing out!

乃木坂46 『Sing Out!』

1番のサビでは”地平線の向こう側にいる見えない人たち”に向けて「想い」を届けるような「歌」を歌おうという、この曲の主題が出てきます。この「この想い」の内容は、Bメロで歌われた希望を指すと考えるよりも、”自分から見えない人たち”への思いやりの「想い」それ自体と解釈する方が自然でしょう。この「想い」は「一人ぼっちじゃないんだよ」の言葉に象徴されています。そしてその内容は続く2番の冒頭でさらに記述されます。

2番のAメロ〜Bメロ -「この想い」とはどんな想いか?-

もし泣いてる人が どこかにいても
理由(わけ)なんか聞いたって意味がない
生きるってのは複雑だし
そう簡単に 分かり合えるわけないだろう

ただじっと風に吹かれて
同じ空 見上げるように
一緒にいてあげればいい
吹きさらしのその心 温もりが欲しくなる
孤独はつらいよ

乃木坂46 『Sing Out!』

1番のサビで歌われた「この想い」とは。それがここで後から歌われて意味を補足しています。

たとえ、”「土砂降りの雨」の中にいる人たち”に同情したところで、分かり合えることはないだろう。なぜなら、人生は複雑で、簡単に他人が理解できるものではないから。だから、「理由なんか聞いたって意味がない」のです。

代わりに、自分はあなたのそばに、ただ、いる。そう伝えたい。「孤独はつらいよ」、だから、例え涙の理由を知らないとしてもそばに人の温もりがあることがとても大切なんだ。
このような考えから、1番のサビでは「一人ぼっちじゃないんだよ」と歌われていたのですね。

2番のサビ -地を踏みならせ-

僕たちはここだ Stomp your feet
存在に気づくように踏み鳴らせ!
仲間の声が聴こえるか?
Bring peace!Bring peace!Bring peace!

乃木坂46 『Sing Out!』

2番のサビでは、歌うこと、手を打ち鳴らすことに加えて、「地を踏み鳴らす」ことで思いを馳せている自分の存在を遠くの人たちへと伝えています。
また、少し本線からずれますが、ここで初めて、”歌を歌う自分たち”と”歌が届いた人たち”が「仲間」と表現されています。エモいポイントですね

Cメロ〜大サビ -歌を歌うのは自分たちだけじゃない-

ここにいない誰かもいつか
大声で歌う日が来る
知らない誰かのために…
人はみな 弱いんだ
お互いに支え合って
前向いて行こう

この想い届け Clap your hands
風に乗って飛んで行け 愛の歌
一人ぼっちじゃないんだよ
Say hello! Say hello! Say hello!

僕たちはここだ Stomp your feet
存在に気づくように踏み鳴らせ!
仲間の声が聴こえるか?
Bring peace!Bring peace!Bring peace!

LA LA LA LA LA LA… Happy!Happy!Everybody be happy!
LA LA LA LA LA LA… Happy!Happy!If you wanna bring big smiles
LA LA LA LA LA LA… Happy!Happy!Everybody be happy!
LA LA LA LA LA LA… Happy!Happy!If you wanna bring big smiles,sing out!

乃木坂46 『Sing Out!』

J-POPではCメロが歌詞全体の意味に大きな影響を与えているものが多くあります。この「Sing Out!」もその例です。

「ここにいない誰かもいつか 大声で歌う日が来る 知らない誰かのために…」。

この表現はこれまでの内容にプラスして歌詞に新たな展開を与えていることがお分りいただけるでしょうか。これまで歌う主体は”自分たち”だけでした。しかしここでは、今は「歌」を歌っていない「ここにいない誰か」が、「歌」を歌うようになることを表現しています。これはとりもなおさず、1番のBメロで歌われた、思いやりの広がる世界になってほしいという”希望”が達成された世界を歌っていますね。

ここで、「ここにいない誰か」とは誰のことを指すのでしょうか?
1.単純に今は「歌」に参加していない人たち。
2.今は歌を受け取って勇気をもらっている存在の人たち。

1.の解釈だと、今は思いやりを世界に発信していない、無関心な人たちが取り込まれて「歌」がムーヴメントとなっていく様子を描写していることになります。これは”希望”が達成されていく様子として解釈できます。
2.の解釈だと、涙を止めた人たちが今度は「歌」を歌う側になって世界に思いやりが連鎖していく様子を描写していることになります。これはCメロの後半に続く、「お互いに支えあって」などの表現と共鳴しますね。

これのどちらが妥当かを考えるにあたっては、1番のAメロの冒頭に全く同じ「ここにいない誰か」という表現が登場することを踏まえる必要があります。それぞれの解釈で、1番のAメロで思いやる対象として描かれる「ここにいない誰か」という表現とCメロの同じ表現の意味の重なりが変化してくるからです。2.の解釈では2つの「ここにいない誰か」が同じものを指していますが、1.の解釈ではニュアンスの違うものを指していることになります。歌詞の中で離れた場所に同じ表現を用いて、同じものを指していることを示すというのはよくある方法ですが、必ずしも毎回そうではないですし、聴き手の解釈に委ねられているといってよいでしょう。

個人的な解釈としてはやはり1番との相同性から、2.の方がしっくりと来ています。皆さんはどちらの解釈をしていたでしょうか?

「Sing Out!」はメッセージとしての性格、そして「歌」としての性格を併せ持つ

さて、ここまで解釈してきた「Sing Out!」を要約すると、

“自分から見えない人たち”は悲しみの中にあるかもしれない。そして悲しみの中にある人たちと分かりあうのは難しく、真に必要なのは孤独ではないことを伝え、ただそばにいることだ。そのために私たちは思いやりを乗せた「歌」を歌い、手を叩き、足を踏み鳴らす。そしていつか、悲しみの中にあった人もこの「歌」を歌う日が来る。この連鎖は私が夢見る、「しあわせを少しずつ分け合う」世界である。

となりました。これを踏まえて「Sing Out!」の歌詞を眺めてみると、「歌」=「Sing Out!」となっている面白い入れ子構造が見えてきます。ここまでの解釈では無視してきた、英語のIntro・Outro・ブリッジ部分や、サビの「一人ぼっちじゃないんだよ」、「仲間(である私たち)の(歌)声が聞こえるか?」といった表現は、「歌」の歌詞としての性格が強い「Sing Out!」の歌詞として存在しているのです。これらの表現は他の叙述的な表現の中で、一段階歌い手の”なま感”の強い表現と言えます。また、このように考えることで、”水平線の向こうの人”へ向けた歌詞の中に英語を用いた作詞者の意図が理解できます。

この構造により、語り手、ひいては乃木坂46のメンバーが「歌」を歌う主体となる効果が生まれています。その意味において、「Sing Out!」という楽曲自体が、「歌」であると言えるのです。

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